「今の仕事を続けていて、自分の市場価値は上がっているんだろうか」。SIerでインフラの仕事をしていると、ふとそう考えることがあります。
私は30代、SIerで10年弱働いているインフラエンジニアです。主にクラウドとインフラを担当していて、仕事ではAzureなどのクラウドを使っています。資格は、クラウドの資格と基本情報技術者を持っています。
2025年に転職活動をして、最終面接で落ちました。そのとき感じたのは、「技術の経験」だけでは足りず、「その会社で何ができるか」を具体的に示せないと評価されにくいということです。
この記事では、SIerのインフラエンジニアが市場価値を上げるために、何をどの順番で身につければいいかを、私の経験とあわせて整理します。
この記事の結論
- 市場価値とは:今の会社の外で、どんな仕事をどんな条件で得られるか
- 最初にやること:自分のスキルを「社内でしか通用しないもの」と「外でも通用するもの」に分ける
- 学ぶ優先順位:クラウドの設計 → IaC(コードでのインフラ管理)→ 自動化・監視 → AIツールの活用
- 見落としがちなこと:技術だけでなく、「その会社・製品で何ができるか」を言葉にする力
- 今日やること:求人サイトで、自分の経験で応募できそうな求人を3つ見てみる
インフラエンジニアの「市場価値」とは
この記事では、市場価値を「今の会社を離れたとき、どんな仕事を、どんな条件で得られるか」と考えます。
社内で評価されていても、それが外でも通用するとは限りません。逆に、社内では当たり前だと思っている経験が、外では評価されることもあります。
自分の市場価値を知る一番手軽な方法は、転職するつもりがなくても、求人を見てみることです。自分の経験で応募できそうな求人の条件を見ると、今の立ち位置がなんとなく見えてきます。私も転職サービスに登録して、企業から直接声がかかったことがあります。
市場価値を測る3つの方法
| 方法 | 分かること | 手間 |
|---|---|---|
| 求人を見る | 自分の経験で応募できる仕事と、その条件 | 少ない |
| スカウト型の転職サービスに登録する | どんな会社が、どんな条件で声をかけてくるか | 職務経歴の登録が必要 |
| 転職サービスの年収査定・診断を使う | 経験やスキルから見た、おおよその年収の目安 | 少ない |
どれも、転職するつもりがなくても使えます。1つの方法だけで決めつけず、いくつかを組み合わせて「だいたいこのあたり」とつかむくらいで十分です。
まず、自分のスキルを棚卸しする
社内でしか通用しないもの・外でも通用するもの
SIerで働いていると、次の2種類の知識が一緒に積み上がっていきます。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 社内・特定の顧客でしか通用しにくい | 社内の手順やルール、特定の顧客のシステム構成、社内ツールの使い方 |
| 外でも通用しやすい | クラウドの設計・構築、ネットワーク、Linux・Windowsサーバー、障害対応、顧客との調整 |
市場価値を上げるには、外でも通用する方を意識して増やすことが大切です。
SIerで身につく「強み」
SIerでの経験は、外から見ても評価されやすいものが多いと感じています。
- 幅広い技術に触れた経験(プロジェクトごとに違う環境を扱う)
- 設計・構築・運用まで一通り関わった経験
- 顧客との調整や、要件を整理した経験
- 障害対応の経験
学ぶ優先順位
1. クラウドの設計・構築
インフラエンジニアの仕事は、クラウドを前提とした内容が増えています。私は仕事でAzureなどのクラウドを使っていますが、まずはAzure・AWS・Google Cloudのどれか1つを、設計から構築まで説明できるレベルにするのが土台になります。
選び方に迷ったら、今の仕事で使っているものから始めるのが一番効率的です。学んだことをすぐ実務で試せるからです。
資格は、学んだことの証明として役に立ちます。ただ、資格だけで評価が決まるわけではないので、「資格の範囲を実務でどう使ったか」を説明できるようにしておくことが大事です。
2. IaC(コードでのインフラ管理)
IaC(Infrastructure as Code)は、インフラの構成をコードで管理する方法です。代表的なツールに、TerraformやAnsible、AzureならBicepなどがあります。
画面で手作業していた構築をコードにすると、同じ環境を何度でも正確に作れるようになります。求人でも、IaCの経験を求める条件をよく見かけます。
3. 自動化・監視
CI/CD(変更の確認や反映を自動で行う仕組み)や、監視・ログの仕組みづくりも、評価されやすい領域です。「問題が起きる前に気づける仕組み」を作れる人は、どの会社でも重宝されます。
4. AIツールの活用
AIツールの進化で、たたき台を作る作業は大きく速くなっています。私も個人でClaude Codeを使っていて、案の検討や大枠づくりにかかる時間が大きく減りました。
一方で、AIは間違えることもあります。AIが作ったものを、自分で確かめられる知識があるかどうかで、AIを使ったときの価値は大きく変わります。AIで仕事がどう変わるかは、Claude CodeとCodexでSIerの仕事はどう変わる?にまとめています。
5. セキュリティの知識
クラウドを使うほど、アクセス権限の設計や、設定ミスによる情報漏えいを防ぐ知識が求められます。インフラの設計・構築に、セキュリティの観点を足せる人は、どの会社でも重宝されやすいと言われます。
技術と一緒に磨きたい「説明する力」
市場価値は、技術だけで決まるわけではありません。インフラエンジニアの場合、次のような力も見られやすいです。
| 力 | 具体的には |
|---|---|
| 説明する力 | 技術に詳しくない人に、構成や影響をかみ砕いて伝えられる |
| 調整する力 | 顧客・開発チーム・運用チームの間で、作業や要望をすり合わせられる |
| 取りまとめる力 | 小さなチームや作業の進み具合を管理できる |
| 書く力 | 設計書や手順書を、ほかの人が読んで分かる形で書ける |
インフラエンジニアのキャリアパス
市場価値を上げる方向は、1つではありません。どこを目指すかで、学ぶことの優先順位も少し変わります。
| 方向 | 主な仕事 | 特に大事なこと |
|---|---|---|
| クラウド・SRE(専門家) | 大きなシステムを安定して動かす仕組みを作る | IaC、自動化、監視 |
| セキュリティ | クラウドやシステムの安全を守る | 権限設計、脆弱性への対応 |
| アーキテクト・ITコンサル | 全体の構成や、ITでの課題解決を提案する | 設計の判断、説明する力 |
| マネジメント | チームやプロジェクトをまとめる | 取りまとめる力、調整する力 |
| 社内SE | 自社のIT環境を長く担当する | 業務の理解、社内の調整 |
まだ方向が決まっていなくても大丈夫です。上の表を見て「これは違う」と思うものを外していくだけでも、学ぶことを絞りやすくなります。
技術だけでは足りなかった:最終面接で落ちて分かったこと
転職活動で最終面接まで進んだとき、私の敗因は、受けた会社の製品の知見がなかったことだと考えています。
クラウドやインフラの経験は話せても、「その会社の製品で、自分の経験をどう生かせるか」を具体的に話せませんでした。
ここから学んだのは、市場価値は「持っているスキル」だけでなく、相手にとって何ができるかを言葉にできるかでも決まる、ということです。
- 応募先の製品やサービスを、触れる範囲で実際に触っておく
- 自分の経験と、相手の事業をつなげて話せるようにする
- 「入社したら最初の1年で何ができるか」を具体的に考えておく
転職活動の詳しい経験は、SIerからの転職を考え始めたらに書いています。
時間が限られている中での学び方
仕事と子育てがあると、まとまった勉強時間はなかなか取れません。学ぶ内容は、次の順で選ぶのがおすすめです。
- 今の仕事で使っている技術:学んだことをすぐ試せて、仕事の成果にもつながる
- 求人でよく見かける技術:外での評価に直結しやすい
- 興味がある技術:続けやすい
全部を同時に学ぼうとせず、1つずつ「人に説明できる」レベルにしていく方が、結果的に早く身につきます。
よくある質問
インフラエンジニアの市場価値は、資格で上がりますか?
資格は、知識の証明として役に立ちます。ただ、採用で重視されるのは「実務で何をしてきたか」と「入社後に何ができるか」です。資格は、実務経験とセットで説明できると効果的です。
オンプレミスの経験しかないと、市場価値は低いですか?
そんなことはありません。ネットワークやサーバーの基礎、障害対応の経験は、クラウドの環境でも生きます。そのうえで、クラウドの知識を足していくのが現実的です。
転職しないなら、市場価値を気にする必要はありますか?
今の会社に残る場合でも、外でも通用するスキルを持っていると、仕事の選択肢が増え、気持ちの余裕にもつながります。私も今の会社に残っていますが、それはまだ成長できる余地があると感じているからです。
関連:社内SEとSIerの違い
まとめ
- 市場価値とは、今の会社の外で、どんな仕事をどんな条件で得られるか
- スキルを「社内でしか通用しないもの」と「外でも通用するもの」に分け、外でも通用する方を増やす
- 学ぶ優先順位は、クラウドの設計 → IaC → 自動化・監視 → AIツールの活用。セキュリティの知識と説明する力も一緒に磨く
- 目指す方向(専門家・セキュリティ・アーキテクト・マネジメント・社内SE)で、優先順位を調整する
- 技術だけでなく、「その会社・製品で何ができるか」を言葉にする力も市場価値の一部
- 時間が限られているなら、今の仕事で使っている技術から学ぶ
まずは、求人サイトで、自分の経験で応募できそうな求人を3つ見てみてください。自分の立ち位置が、少し具体的に見えてくるはずです。


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